【イメージしてみよう】
4月から新社会人!
でも、会社の就業規則をよく読むとこんなことが書いてあった。
「ひげは認めない」
「茶髪・金髪は認めない」
「男の長髪は認めない」
「化粧は認めない」
「私服はもちろんビジネスカジュアルも認めない」
「マジかよ……」
これってあり(合法)? なし(違法)?
【問いと答え】
問い:
労働者は、会社が独自に定めた「身だしなみの基準」に従う義務があるのか。
答え:
ある。(ただし、合理性がなければ拒否できる)
【解説】
本来、上に挙げたような「身だしなみ・身なり」に関することは、個人の自由であるべき問題です。
(「自己決定権(日本国憲法第13条/幸福追求権)」「表現の自由(日本国憲法第21条)」)
したがって原則としては「どんな格好で仕事をしていてもいい」という結論が導き出されます。
しかし、業務に支障がある場合は別です。
安全のために身なりや身だしなみについて会社が独自の基準を設け、制限することは合法です。
さらに! その命令に従わない者に対して処分したとしても何ら問題はありません。
昨日やりましたよね? 会社は職場の秩序を維持する権利があるのです。
たとえば、
制服着用=「作業の安全性や効率化ため」
口髭禁止=「客に不快感を与えないため」
長髪禁止=「衛生面を考慮した結果」
このようなものは合理的な理由と言えます。
したがって合法と言えるでしょう。
ただし、就業規則等にきちんと書かれていない場合、身なりや身だしなみに関する制限が業務と全く関係ない場合、手段として合理的ではない場合には、そのような身だしなみに関する制限は違法です。
こんな場合はそもそも身だしなみのルール自体が無意味です。
このルールを守らなかったことで処分されても、恐らくその処分は無効になります。
過去いくつかの判例で示されている通り、
「これは合理的じゃないよね? じゃあ、この身だしなみルールを守らなかった人は悪くないよね? 処分は無効だね」と裁判所が示しています。
ヒントとなる判例
その1
就業規則で禁止されている「ひげ」をたくわえたハイヤー運転手が、ハイヤー乗務からはずされた。
↓
就業規則で禁止されている「ひげ」とは、顧客に不快感を与える「無精ひげ」や「異様・奇異なひげ」である。
今回問題になったハイヤー運転手の「ひげ」は、顧客に不快感を与えるひげではないのでひげを剃る義務は無い。
(イースタンエアポートモータース事件 東京地裁 S55.12.15 より要約)
その2
伸ばした髪、伸ばしたひげの郵便局員に対し、賃金をカットした。
↓
今回問題になった職員の「長髪」と「ひげ」は、郵便局が定めた「身だしなみ基準」の「顧客に不快感を与えるようなひげ及び長髪」には該当しない。
長髪とひげを全面的に禁止する過度な制限は、合理的な制限と認められない。
(郵便事業(身だしなみ基準)事件 大阪高裁 H22.10.27 より要約)
まとめ
会社が定めた「身だしなみの基準」には、それが合理的である限り従う義務がある。
しかし、「合理的かどうか」の判断基準はケースバイケースである。
ゆえに「会社が定める基準」が「実際の業務」との関係で本当に手段として合理的かどうか、労働者の側でも判断する必要がある。
うん! 昨日と同じ結論だね。
結局のところ、昨日の「残業命令問題」にしても、今回の「身なり問題」にしても、労働者の側でも一度「考える」ってことが必要なようだね。