『八甲田山』
さすが名作。面白い。恋愛も少なめで渋くていい。日本軍ぽい無能な感じも絶妙。二百三高地の「ひたすら突撃&玉砕=死屍累々」のあの雰囲気を思い出した。組織論としても面白いかも。一方は大勢でピクニック気分で短距離、一方は少数精鋭で長距離。しかし運命が全く違う。ただ残念なのはリアリティが凄まじい画面の一方で映像が乱れまくっていて「映画」としては見づらいところ。あと登場人物も分かりにくい。ひたすらぐちゃぐちゃだから、もっと何がどうなってるのか分かる感じが無いと映画としては楽しさ半分ってところかなあ。三國連太郎好き。高倉健はちょっと演技が下手な気がする。
『エベレスト』
八甲田山よりもちゃんと「映画」で面白い。でも残念だけどプロとして客に登頂を諦めさせるべき場面で、さも人情家のようにふるまって時間をオーバーして登頂に付き合った結果、その客も転落、自身も遭難って結末がいただけない。単純に悲劇的な映画を観て「なんて理不尽な」って浸りたかっただけなのに「なんだろう、自業自得じゃね?」って気持ちも湧いてきて腑に落ちなかった。不完全燃焼。あと数百メートルの距離、目の前のあの山の頂を諦められない、という気持ちはいいんだけど、そこをあえて辞めさせるのがプロだったはず。山登りにしかわからない気持ちだと言われたらそれまでだけど、自業自得の遭難&凍死に見えてイマイチだった。
『アイガー北壁』
恋愛少なめで、自業自得感も薄く、なおかつ映画映えする悲劇に仕上がってていい感じ。また前者二つと比べて、ギャラリーの存在も興味深いシチュエーション。「成功か悲劇かどっちかを見たい。救出劇なんてつまらない」という新聞屋の存在が、我々に対する皮肉も混ざってる気がして好み。そしてラスト、あと数メートルの距離でカラビナにロープの結び目が引っ掛かって力尽きるあの残酷さが良い。緊急時だししょうがないけど、あんなテキトーなロープ渡すなよって思ったことも含めていい感じ。足折れてめっちゃ痛くて、山中に悲鳴がこだまし続けたあのシーンも良かった。
総評
結局、八甲田山が一番好きかもしれない。八甲田山に満足できなくてほか2本見たようなもんなのに、やっぱり八甲田山が面白い気がする。古い映画だからもうちょっと工夫して見やすくしたいけど、見づらいだけでやはり名作だと感じた。