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なぜ「 #検察庁法改正案に抗議します 」なのか/政府の法解釈があいまいで不要不急の法改正だから反対です

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2020年5月10日に「 #検察庁法改正案に抗議します 」というハッシュタグがものすごく流行りました。あのきゃりーぱみゅぱみゅさんもツイートしたことで話題になりましたね。

 

でも、一般人の我々には結局何が問題なのか正直分からなかったと思います。そこで簡単に私が説明します。

 

ズバリ結論はこれです。

 

問題は大きく3つあります。

 

  1. 黒川検事長の定年延長に「国家公務員法」を使ったことに無理があること。
  2. 国家公務員の定年を一律65歳に変更する必要が「今は」ないこと。
  3. 検察庁改正案に「特例延長」の規定があり、検察庁の独立性を脅かすこと。

 

この3点から「 #検察庁法改正案に抗議します 」が出てきます。

 

本文ではこれら3つのことについて、順番に説明していきます。

 

 

【問題1】黒川検事長の定年延長に「国家公務員法」を使っていいのか?

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まず、黒川検事長の定年延長に「国家公務員法」を使ったことに無理があります。これは法律の運用が間違っています。改正案に賛成するとか、反対するとかその前段階の問題です。

 

現在の法律では、それぞれこのような決まりになっています。

 

  • 国家公務員法:定年は60歳。ただし1年特例延長できる。
  • 検察庁法:検察官(黒川検事長)の定年は63歳。検事総長の定年は65歳。

 

黒川検事長の誕生日は2月8日で、2020年2月8日で63歳になります。検察庁法の規定に従えば、このままだと定年になります。そのため2020年1月31日に黒川検事長の勤務延長(定年延長)を決めた(閣議決定した)のです。延長は半年間です。政府は、カルロス・ゴーン被告の件やIR汚職事件の捜査を理由として挙げました。

 

とりあえず理由については置いておくとしても、その理屈が良くないのです。この時使った法律が「国家公務員法」の「1年特例延長できる」という規定だったのです。

 

もちろん、黒川検事長も国家公務員です。なので「国家公務員法」を使ったとしても別におかしくは無いように見えます。しかし、国家公務員法の解釈については「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない(だって検察庁法があるから)」と答弁しています。

 

  • 1981年(昭和56年):「検察官に国家公務員法は適用されない」
  • 2020年(令和 2年):「検察官に国家公務員法は適用される」

 

ここが矛盾しています。そもそも国家公務員法は一般法で、検察庁法は特別法という関係です。「普通は国家公務員法を使うけど、検察庁(検察官)は特別ね」という意味であえて検察庁法があるのです。

 

なので昭和56年に言っていたことが正しいはずなのですが、なんで40年経ったら言ってることが変わってしまったのか。これは良くないです。解釈で法律をいくらでも好きなように使ったり、使わなかったりできるなら法律がある意味がありません。

 

【問題2】コロナで大変な今、法改正する必要があるのか?

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そしてここで改正案が出てきます。国家公務員の定年を一律65歳に変更する必要が「今は」ないことを説明します。

 

政府の改正案は次の通りです。

 

  • 国家公務員法改正案:国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる。
  • 検察長法改正案:検察官の定年を63歳から65歳にする。新たに特例延長規定を作る。

 

人生百年時代の日本です。平均寿命は延びていますし、高齢者の雇用は広げるべきです。民間がすでにやっていることなので、当然公務員もそれに習うべきです。むしろ、国(公務員)が積極的に「高齢者が長く働く仕組み」を手本として見せるべきです。

 

なので、この改正案自体にそれほど間違いはありません。言いたいことは分かります。

 

しかし今はコロナで世の中大変な時です。なぜ、今急いでやる必要があるのか。この点が納得できないでしょう。今は補正予算を通して国民の経済を支えるべき時です。

 

ずっと議論されてきたことなので「定年延長」は必要なことではありますが、今ではありません。

 

問題は先ほど述べた「黒川検事長」の件があった上で、この改正案を出したことです。

 

百歩譲って「国家公務員法」で黒川検事長の定年延長がOKだとしたら、じゃあなぜわざわざ後追いするかのように「検察官の定年を延長する」改正案を出す必要があるのでしょうか。順番が逆です。この法律を作った後なら誰にも文句は言われないはずなのです。

 

「やっぱり検察庁法の改正が必要だった」と政府が認めるのであれば、1月の解釈変更は何だったのか。あの閣議決定は間違いだったということになります。どちらなのでしょうか。矛盾しています。

 

【問題3】検察庁法に「定年特例延長」は必要なのか?

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しかも今回の改正案では検察庁法にも、国家公務員法のような「定年特例延長」の規定を作るものです。これが3つ目の問題点です。

 

改正案では、定年の特例延長を決めるのは「内閣」となっています。検察は確かに行政の一部なので内閣に従うのが原則かもしれません。しかし検察の役割はかなり特殊です。

 

過去においてはロッキード事件やリクルート事件などの汚職が検察の手によって、暴かれました。裁判所が乗り込んでいって「おかしいぞ!」と言えない仕組みだからこそ、検察という組織は重要なのです。そういう仕組みで今まで運営してきたのです。

 

これは安倍晋三内閣総理大臣を支持するとか、しないとか、自民党を支持するとか、しないとかという問題ではなくて、検察の人事に内閣が口を出せるように法律を変えることが果たして良い事なのか、という問題なのです。

 

検察庁法が改正案のまま改正されても、施行は2022年4月1日からなので黒川検事長には関係ありません。また黒川検事長は検察庁のナンバー2です。検察庁のトップには稲田検事総長が在任中です。稲田検事総長も定年間近ですが、稲田氏自身が退官を決めなければ黒川氏は今回の改正案ですんなり検事総長になれるわけではありません。

 

安倍首相と黒川氏の関係と改正案で言いたいことは本来別問題です。しかしタイミングが悪すぎます。これでは、わざわざ1月に黒川氏を無理やり検察に残して、でも本当は法律違反だったから法律のほうを変えて無かったことにしようとしていると勘ぐられても仕方ないでしょう。

 

検察庁も行政の一部です。確かに法務大臣の権限の下で運用されている組織ではあります。しかし、検察の仕事はちょっと政治的なこともあります。だから今の政府とは距離を取る必要があるのです。国会議員はもちろん、内閣総理大臣や閣僚に対しても捜査・起訴できるのが検察です。

 

もちろん検察も「お役所」であることに変わりがないので、検察が正義の味方だとは言いません。時には政治家のほうが正しい場合もあるでしょう。安倍首相が現在進行中で汚職に関与しているという証拠も今のところどこにもありません。ここを勘ぐり始めると陰謀論になりかねません。もし疑いがあるなら証拠が必要です。

 

それよりも、検察と内閣の力関係のバランスが今回の改正案によって崩れませんか?というのが主題です。そして、今急いでやるべきことですか?というタイミングの問題でもあります。そもそもなぜ解釈変えたんですか?とも聞かなければいけません。

 

ぜひあなたも考えてみてください。

 

検察庁法の改正に賛成ですか? 反対ですか?

 

これは安倍晋三内閣総理大臣に対する感情の問題ではありません。法律を「解釈(その時の気分)」で読み替えてもいいんですか? という問題です。

 

野党からの反対意見が強い印象ですが、これは与党内から反対意見が出てもおかしくはありません。保守の論客を自認する人にこそ法律の運用について政府に厳しく指摘する必要があります。

 

まとめ

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検察庁法の改正案には3つ問題点がある。

 

  1. 黒川検事長の定年延長に「国家公務員法」を使ったことに無理があること。
  2. 国家公務員の定年を一律65歳に変更する必要が「今は」ないこと。
  3. 検察庁改正案に「特例延長」の規定があり、検察庁の独立性を脅かすこと。

 

つまり「国家公務員法では検事長の定年延長はできない」と確認したはずなのに今になってそれを無かったことにして、後追いで法律を変えようとしているように見える、ということ。

 

表向きは「人生百年時代だから定年を延ばしました」と政府は説明しているが、コロナで大変な今、急いでやることなんですか? ということ。

 

しかも改正案には、内閣が検察官の定年延長を決める規定も新たに設けられ、検察と政府(政治家)の距離のバランスが崩れてしまいませんか? ということ。

 

参考記事

 

「#検察庁法改正案に抗議します」にも法案にも、反対する – アゴラ

検察官定年延長法案は、不当極まりなく、必要性も全くない – アゴラ

いったい検察庁法改正案の何に抗議しているのか|徐東輝(とんふぃ)|note

東京高検検事長の定年延長はやはり違法(渡辺輝人) - 個人 - Yahoo!ニュース