「女性天皇」と「女系天皇」は似て非なる全くの別物なので、その辺の情報をいったん整理しておきたいと思います。
この記事では「女性天皇」と「女系天皇」の違いについて分かりやすく説明しています。あいまいだった2つの違いについて理解できると思います。
簡単に言うと次の通りです。
- 女性天皇=天皇が女性って意味。天皇が女でもいいのかどうかって議論の中で出てくる言葉。推古天皇(女性天皇)など過去に例がある。
- 女系天皇=母方から天皇の血を受け継いでいる天皇って意味。ここで天皇が男性か女性かは問わない。日本の歴史上、天皇は例外なく全員「男系天皇」。これまで「女系天皇」は前例がない。
女性天皇と女系天皇の違いを分かりやすく解説する
女性天皇とは「天皇が女性」ってこと
天皇が男か女かって話。女の天皇=女性天皇。
つまり女性天皇=女性が天皇ってこと。単純な話です。
近代だと、明治天皇、昭和天皇、上皇陛下、今上陛下が直近の4代ということになりますが全員男性なので、男性天皇です。
ただ、過去には推古天皇から後桜町天皇まで8人(10代)の女性が天皇になっています。まさにこれが女性天皇です。
つまり女性天皇については、天皇126代、2,000年以上に及ぶ皇室と日本の歴史の中で、前例が複数あるということです。
女系天皇とは「母方が天皇」ってこと
母方をたどれば過去の天皇に行きつく天皇。
もっと分かりやすく言えば「母方の親戚に天皇がいる、天皇」、これが女系天皇です。
先に話した「女性天皇」のときは天皇の「性別」の話でしたが、「女系天皇」の話で大事なのは天皇の血筋の話です。
天皇のルーツをたどっていって、母方で天皇に行きつくならそれは女系天皇ってことになります。
……とすると、天皇の性別は関係ないんですね。お分かりでしょうか?
ちょっとややこしいですが「女系」には「女系男性天皇」と「女系女性天皇」がいるってことになります。
サザエさん一家(磯野家)で「女性天皇」と「女系天皇」を考えよう
「女系男性天皇?」、「女系女性天皇?」と分からなくなったあなたのために、いい例を出します。
YouTuberのKAZUYA氏(京本和也氏)がTwitterに面白い画像をアップしていたので参考にしてみましょう。
男系とか女系とか皇室関連の話題はややこしい。
— KAZUYA (@kazuyahkd2) April 29, 2019
サザエさんで例えるとこうなります。
父方が天皇の血を引いているのが青の男系、母方に天皇の血を引いているのが赤の女系。
サザエさんが即位したら男系の女性天皇。タラちゃんが即位したら女系の男性天皇。
これまで天皇は男系で受け継がれています。 pic.twitter.com/mKxFKJ81di
最初は「女性天皇」の話をサザエさん一家に当てはめて考えてみます。
仮に波平を「天皇(今上陛下)」とすると、波平には3人の子供がいます。
みなさんおなじみの「サザエさん」と「カツオくん」と「ワカメちゃん」です。
皇位継承ってことを考えると、普通に考えれば天皇の子供が次の天皇になるわけですから、この場合、波平の子供であるサザエ、カツオ、ワカメが皇位継承権を持っています。
長女のサザエが次の天皇になれば、女性天皇です。
長男のカツオが次の天皇になれば、男性天皇です。
次女のワカメが次の天皇になれば、女性天皇です。
この辺は分かりやすいはずです。天皇が男性か女性かという話ですから。
今の日本のルール(憲法と皇室典範)では、皇位は「男子に限る」とされているので「カツオ」しか天皇になれません。
それを「サザエ」も「ワカメ」も天皇になれるように「女性天皇」を認めようじゃないか、というのが今話題の議論です。
現実の話しも全く同じで、今のルールでは「愛子内親王殿下」は天皇にはなれません。女性ですからね。
ルール上、天皇になれるのは男性のみなので今上陛下の次の天皇を考えると「皇嗣殿下(文仁殿下)」か「悠仁親王殿下」という選択肢しかありません。
そこをルールを変えて、男性も女性も天皇になれるようにすれば「愛子内親王殿下」も天皇になれるし、「眞子内親王殿下」も「佳子内親王殿下」も天皇になれます。
これが「女性天皇」に関する議論です。
次に「女系天皇」の議論を考えてみます。もう一度、画像をみてみましょう。
男系とか女系とか皇室関連の話題はややこしい。
— KAZUYA (@kazuyahkd2) April 29, 2019
サザエさんで例えるとこうなります。
父方が天皇の血を引いているのが青の男系、母方に天皇の血を引いているのが赤の女系。
サザエさんが即位したら男系の女性天皇。タラちゃんが即位したら女系の男性天皇。
これまで天皇は男系で受け継がれています。 pic.twitter.com/mKxFKJ81di
ツイートのコメント通り、色分けがされていますよね。赤と青です。
女性天皇を認めると、サザエもカツオもワカメも天皇になれます。
誰が天皇になったとしても全員「男系天皇」だということがお分かりでしょうか。なぜなら「お父さんが天皇」だからです。
サザエとワカメは「男系女性天皇」です。
カツオは「男系男性天皇」です。
だからこの時点では「男系」か「女系」かって話は関係ないんですよね。全員「男系」ですから。
問題は次の世代です。次の世代の天皇が「男系」か「女系」かって話になります。
まず、サザエの子供はタラオです。タラちゃんですね。
タラちゃんは男性です。タラちゃんが天皇になったとしたら、もちろん「男性天皇」ということになります。
しかし「女系」です。即位した場合、タラオは「女系男性天皇」となります。なぜなら「サザエさん」経由で過去の天皇につながっているからです。
母方(サザエ)で天皇につながっているという事ですね。
ワカメちゃんも同じです。堀川君と結婚して子を授かったとすると、男性の場合も女性の場合もワカメという「母方」を通じて過去の天皇につながっています。
つまり「女系天皇」です。
要するに「女性天皇」の子供が天皇になった場合、性別を問わず「女系」ってことですね。
日本と皇室の歴史において、「サザエ」や「ワカメ」までなら過去に事例があります。
問題はその次の世代、子供が天皇になれるかどうかなんです。
もし仮にタラオやワカメの子供が天皇になった場合、日本と皇室の歴史が大きく変わってしまうことになります。
過去2,000年以上にわたり「男系」で継承してきた天皇が「女系」もありということになると、相当混乱します。
まとめ
- 「女性天皇」は「天皇が女性」ってこと。今の法律のもとで「女性天皇」は認められていないが、女性天皇は前例が8人(10代)ある。
- 「女系天皇」は「母方で天皇につながる」ってこと。女性天皇の子供は、男女関係なく「女系天皇」である。
- 日本の歴史において、女性天皇は確かに存在するが全員「男系」の「女性天皇」である。「女系天皇」は過去存在しないので実現すれば、未来の日本史が大混乱する恐れがある。
- 「女系天皇」は事実上の王朝交代であり、従来の皇室の終わりとも言える。
おまけ:さくら家で考えてみた
『ちびまる子ちゃん』でおなじみ、「さくらももこ」で皇位継承を考えてみた人がいます。
面白いので載せておきますね。
これを「ちびまる子」の「さくら家」で例えてみた。
— ニシ@みりぃ神推し (@sUAQYDmzfZ24iPi) 2019年4月30日
なお、さきこ・ももこがそれぞれ結婚して男女(女男)の子供をもうけたという設定です。
もし天皇が友蔵→ひろし→さきこ→男(さきこの息子)?
友蔵→ひろし→さきこ→ももこ→男(ももこの息子)?
どちらにしても男系の血が途絶えるじゃん😭 pic.twitter.com/fyk6Cr7pL7
……ということで、ひろしの子供は女性(さきこ・ももこ)しかいないので男系が終わってしまうってオチです。
今の皇室に悠仁親王殿下がいらっしゃらなかったら、こうなっていたわけです。絶望しかありませんね。
悠仁親王殿下がお生まれになる以前、今から12年前の2006年より前はこんな雰囲気でしたね。確か。
だから時の小泉内閣が「皇室典範に関する有識者会議」をつくって、女性天皇を認め、女系天皇を認め、女性宮家も認め、女性天皇の配偶者は「陛下」と呼び、皇位継承は第1子優先で行こう! としたわけです。
絶望しかない「さくら家」の皇位継承ですがが、実は続きがあります。
なんと「ひろし」には兄弟がいたんですね。知らなかったwww
acrisさんの指摘の通りWikipediaで調べて「さくら家」の家系図を分かる範囲で親戚まで作り直してみた。これについては、さきこ・ももこと同様にあけみ・ひろあきがそれぞれ結婚して男女(女男)の子供をもうけたという設定です。 pic.twitter.com/jcEGafcq8T
— ニシ@みりぃ神推し (@sUAQYDmzfZ24iPi) 2019年4月30日
男系ルールのもとだと、友蔵、ひろし、その子供という直系の皇位継承はももこの世代で途絶えます。
しかし、ももことさきこのいとこ、ひろあきがいるのでひろあき父経由でひろあきに皇位が継承されれば、男系継承は維持できるんです。
確かに直系ではなくなるので、ひろしがもし「子供に皇位を継がせたいのだが……」と思っていたらちょっと残念な結果ではあります。
ただ、皇位継承は個人の思いよりも、歴史と伝統のほうがこの際大事なのでひろあき父、そしてひろあきに皇位が継承されていくべきなのです。
天皇の歴史、皇室の歴史はこういうことばっかりです。「直系じゃないじゃん! 誰だよ!」って人が、遠い親戚が天皇になったりします。でもどの皇位継承も必ず「男系継承」になっています。