お店に5tトラックが導入されて、こないだ新車が納車されたんだけど、タイヤに「デフロック」とかいう機能が付いていた。
僕はプライベートで軽自動車しか乗ったことが無いので、「デフロックが付いてますね」とか言われても、さっぱり意味が分からない。
……ということで、以前自動車工場に勤めていたという同僚に「デフロックとは何ぞや?」と聞いてみた。
やっぱり詳しかったねえ~。色々教えてもらった。
とりあえず素人が「デフロック」について覚えておくべきことは「タイヤが空転した時にデフロックを使えば、溝やぬかるみから抜け出せる可能性が高まる」ってこと。
普段は「デフロックしない=オープンデフ」状態が正しい。
ただし、溝にハマって抜け出せないとか、雪のわだちにハマって抜け出せないとか、ぬかるみにタイヤの片方が埋まってキュルキュル空回りしてる、とかそういう状態になったら「デフロック」を使う(デフロックする)。
すると、抜け出せる確率が高まるんだってさ。
詳しい説明は記事に書くけど、要するにデフロックすると「右の車輪」も「左の車輪」も同じ回転数になるから、せめて片方のタイヤが生きていればタイヤがちゃんと回転してくれて、前に進むことができる。だから、溝とかぬかるみから抜け出せるんだって。
説明を聞いて、「なるほどな~」って思った。
「デフロックって何?」
「そもそもデフって何? 差動装置って何?」
って話しをしたんだけど、クルマの仕組みって面白いよね。
解説したくなったので記事にする。
「差動装置(デファレンシャル)」って何?/タイヤ間の内輪差を吸収する装置
「デフロック」の「デフ」って何かって言うと、「デファレンシャル」のこと。
デファレンシャル、つまり「差動装置」という意味。
この「デファレンシャル(差動装置)」を「ロック」する、つまり「無効」にすることが「デフロック」ってわけ。
じゃあ、そもそもデファレンシャルはどんな仕組みなのか。
これが分かってないと、デフロックも分からない。
ということで、まずはデファレンシャル(差動装置)の話しをするね。
デファレンシャルの仕組みをひと言で言うと、クルマがカーブするときに生まれる「左右のタイヤの回転差(内輪差)」を吸収する装置ってことになる。
内輪の回転差を動的に吸収する装置だから「差動装置(デファレンシャル)」。
例えばなんだけど右にクルマが右にカーブするじゃん?
すると、内側のタイヤの回転は少なくなって、外側の回転は多くなるんだよ。
イメージできるだろうか。
ほら、小学校の運動会にリレーって種目があったと思うけど、カーブの外側を走る選手のスタート位置って、内側の選手と比べてかなり前のほうにあったよね?
「外側の人だけズルい!」なんて思ったりするけど、あれってカーブの分だけ外側の人が走る距離が長いから、それを公平にするために前のほうにスタート位置があるんだよ。
あのハンデがあるからカーブの外側だろうが、内側だろうが距離的には同じになってフェアな戦いになる。
理屈はタイヤもリレーも同じで、カーブを曲がるときの左右のタイヤの間に回転差ができるんだよね。
外側のタイヤは、内側のタイヤよりもたくさん距離を走らなきゃいけない。つまり、内側より外側のタイヤのほうがたくさん回転しなきゃいけない。
この回転差が、走る距離の差=回転する数の差。
これを歯車の組み合わせで吸収して、外側のタイヤがたくさん回れば回るほど、内側のタイヤはあまり回転しないように調整してるのが「差動装置(デファレンシャル)」なんだな。
もし、このデファレンシャルがなければどうなるかっていうと、外側のタイヤがたくさん回転すればするほど、内側のタイヤもたくさん回転しなきゃいけなくなって「空回り」しちゃうことになる。
でも普段、内側のタイヤが空転しないのはこのデファレンシャル(差動装置)があるからなんだよね。
「デフロック」とは「左右のタイヤの回転数を一致させる」こと
デフロックをかけない状態、つまりオープンデフの状態が通常の状態。
だから平地を走ってる時は、右のタイヤも左のタイヤも同じ比率で回転してる。
ただし、左右のどちらかのタイヤが空転すると、空転してる方のタイヤにデファレンシャルが全ての力を割り当てちゃう。
これがデファレンシャルの欠点。
タイヤが空転してるから、デファレンシャルがエンジンの回転エネルギーをすべてそっちに割り振っちゃって、その分もう片方のタイヤが全く回らなくなる。
これだと、せっかく片方のタイヤが地面に接地していて摩擦がちゃんと効いていたとしても、エンジンの回転エネルギーが全く伝わらないから溝やぬかるみから、なかなか抜け出せない。
そこで本題「デフロック」の出番。
デフロックすることで、左右のタイヤの回転数を一致させることができる。
つまりこれでエンジンの回転エネルギーを50:50の比率で、左右のタイヤに割り振ることができるから、片方のタイヤが空転していても、もう片方のタイヤにエンジン出力の半分の力が伝わって、片方のタイヤが前に進んだり後退することができる。
つまり、片方のタイヤが死んでても、もう片方のタイヤが生きていればなんとか、溝やぬかるみから抜け出せるってこと。
なるほどねー。
ただし、デフロックはあくまでそういう時に使う機能。
また平地に戻ったらデフロックを解除してオープンデフにしておかないと、内輪差を吸収できない。
デフロックしたままだと、カーブで曲がるとき外側のタイヤの内輪差が吸収できなくなって内側のタイヤが空転するから、大変危険!
デフロックはあくまで非常時に使うもの。これを覚えておくべし。
まとめ
- 「デフロック」とは左右のタイヤの回転数を一致させること。
- 普段は「デファレンシャル(差動装置)」によって左右のタイヤの内輪差は吸収している。(左右のタイヤは異なる回転数で回ることができる)
- ただしデファレンシャルは、片方のタイヤが脱輪などして空転すると、もう片方のタイヤが回転しなくなるという欠点がある。
- この欠点を補う装置が「デフロック」である。