簡単に言うと、右翼は『現状維持派』で、左翼は『現状否定派』です。
政治は複雑で、さらに「経済」という視点も加えると一概に「右翼」か「左翼」かだけで政治や経済を論じることはできません。
しかし、意味がはっきりしないまま未だに使われている言葉なので、多少理解しておく必要があります。
右翼を「保守」、左翼を「リベラル」と言い換えてもいいかもしれません。
右翼と言えば、街宣右翼。左翼と言えば核マル派ってほど分かりやすいものではありません。残念ながら。
フランス革命と右翼と左翼
右翼と左翼は、フランス革命期に国民議会に招集された議員たちの座席に由来する言葉です。
議長からみて右側に座っていたのが「王党派」。つまり王様の存在を認めて、王様に一定の権限を残すことを主張していた人たちのことです。
一方左側には王制をやめてすべての人が同じ身分で政治をするべきと主張した人たちが座っていました。これが右翼と左翼の起源です。
王様を残す=右側に座っている人たち
王党派は、もちろん革命が起きてしまった以上、王様を贅沢な暮らしに戻してあげることまではできないにせよ、王様を残すということ自体は従来と何ら変わりありません。したがって、そういう意味で「現状維持」ということになります。
王様を残さない=左側に座っている人たち
これに反対し、王様や王族をすべてなくしてしまえというのが左翼(共和派)の人たち。王制を無くすということは、国の形やしくみがガラっと変わります。ということは、強い現状否定。強烈な主張以外のなにものでもありません。
ディベートの流儀から考える右翼と左翼
ということで、右翼は現状維持派。左翼は現状否定派、ということでざっくり押さえておきましょう。
さて、ここでそいういう右翼・左翼論争の見方をちょっと変えて、ディベートの話をします。
皆さんはディベートって知ってます?
ディベートって何か、詳しいことは各自調べてほしいのですが、要するに「ある主張について、賛成か反対か言葉で殴り合って、審判が勝敗を決める知的なゲーム」です。
例として、中高生を対象としたディベートの大会(ディベート甲子園)があります。今年の中学生のテーマは「日本は地方公共団体の首長の多選を禁止すべきである。是か非か」。高校生のテーマは「日本は国民投票制度を導入すべきである。是か非か」のようです。
いずれのテーマも、「今はやっていない新しいこと」です。
したがって、
これに賛成するということは、現状否定派=左翼=リベラル。
これを否定するということは、現状肯定派=右翼=保守、
ということになります。
ディベートの勝敗の意味
で、ディベートの例を出したのは「勝敗」の意味が面白いから。
最初に主張するのは賛成派の側です。そして賛成派が負けるということは、裏返しで否定派の勝利という決着方法になります。
必ず勝敗がつきます。引き分けはありません。
そして勝敗を決めるのは賛成派でも否定派でもありません。
ジャッジ役です。
ジャッジが賛成派の言うことに「せやな」と納得すれば、賛成派の勝ち。左翼大勝利というわけです。
一方負ければ、裏返しで否定派の勝利。
ポイントは否定派が勝ったわけではなく、賛成派が負けたから否定派が勝った点。積極的に勝ったわけじゃないんです。そこを勘違いしちゃいけない。
右翼と左翼は裏表の関係
つまり、右翼と左翼、あるいは保守とリベラルというのは、そういう関係ということです。どっちがいいというわけではない。
基本的に、右翼は左翼の攻撃に耐えなきゃいけない。
左翼が負けたということは、「これやろうよ! みんな!」という呼びかけにそれほど説得力が無いということです。「じゃあ、今のままでいいよね」ということで、右翼が勝利する。
でも、左翼側も負けたからと言って、今のままが最高だという判断が下されたわけではありません。「ある1つのアイディアが否定された」というだけの話なんです。
左翼は懲りずに何度も何度も右翼に挑戦し続ける必要があります。
逆に右翼の側は常に受け身です。左翼からの攻撃が無ければ、言葉を発せません。そうですよね。誰にも何も言われなければ、当たり前の状態をあえて言葉で説明する必要はありませんから。
右翼が重視するものと左翼が重視するもの
右翼、保守という立場は、
「歴史・文化・伝統」を重視します。
なぜか。これまで続いてきたからです。これまで続いてきたのだから、続いていいはずだ。続けるべきだ、という考え方です。
ほっといてもそうなっちゃう。デフォルトということですね。
そこに否を唱えるのが左翼やリベラルの人たち。
彼らは「人間の理性」を大事にします。つまり「考えれば、よくなるはず」ということです。人間の力でどうにかしようとします。現状に対して問題意識を持ち、常識にとらわれず自由な発想で「アイディア(処方箋)」を出します。
右翼は左翼を納得させなければならない
でも、保守の立場からするとリベラル派は「思い上がり」に映るかもしれません。「無茶だ!」「できっこない!」「ありえない!」「非常識だ!」というわけ。
本当に無茶だったとして、リベラル派が否定されたとします。保守はほっとしていられません。だって問題は解決されていないわけですから。リベラルは言い続けます。「じゃあどうするんだ!」と。リベラルは耳が痛いことばかり言います。だから保守は保守で解決策を模索する必要があります。
まとめ
右翼は現状維持派。左翼は現状否定派。
喧嘩をふっかけるのは左翼からです。でも右翼も応戦する責任があります。
また左翼が議論に負けて引っ込んだとしても、それは右翼の絶対的勝利ではありません。
いつか、また必ず左翼が挑んでくるでしょう。
右翼はそれを迎え撃つべく準備(改革)する必要があります。